要望1位が“収納がたくさん欲しい”という人へ
今日のブログはちょっと辛口です。
わが家は20年近く住宅をメインにした設計事務所をやっています。また、友人からもさまざまな家づくりの相談を受けてきました。
その経験から感じるのが、家を建てる時、第1の要望が「収納がたくさん欲しい」という人は、結果的に家づくりがうまくいかないということです。
もちろん、敷地、予算に余裕がある場合は問題ありませんが、どちらも限りがある中で、収納にこだわりすぎることはもったいないと思います。
特に狭小住宅こそ、収納を優先しすぎないほうがいいと考えています。
収納にこだわるのはもったいないと思う理由
なぜ、そう思うのか?理由はいくつかあります。
まず、予算面です。
「きっちりした収納でなくても、とにかくモノがたくさん入ればいい」と思いがちですが、工事する面積が増えれば予算は上がります。限られた予算を収納ばかりに使ってしまうのはもったいないです。
敷地も同じで、特に狭小住宅の場合、家具を置かないようにするために作り付けの収納を増やそうと考えがちですが、その分、居住空間は減ってしまうわけです。
そうやって収納を増やすことが中心となってしまうと、その空間を活かした設計ができず、せっかく注文住宅にした意味がなくなってしまいます。
収納を希望した人の“家を建てた後”
収納を重視する人の多くは「収納が少なければ、部屋にいつもモノが出ている状態になって狭くなる」「今は賃貸住宅で収納が少ないのが不満。家を建てたらスッキリ暮らしたい」と考えていると思います。
でも、これまで家を建てた後のお客さまや友人から話を聞いて感じるのですが、そういうふうに考えていた人の多くが、結局、収納のある家を建てても「家が片づかない」と言っているのです。
その理由を考えてみると、
- 収納が増えた安心感で、結局、モノが増えてしまう(買ってしまう、もらってしまう)。
- 収納を上回る量のモノを持っていることに気づいていない。
- 収納が多ければ解決すると考え、なぜ片づかないか、どんなものが片づかないかを分析していない。
- 作った収納が、入れたいものと合っていない(一番使う場所にない、深さなどが入れたいものと合っていなくて出しにくい)
など色々あります。
スッキリ片づいている人の共通点とは?
当設計事務所で家を建てられたお客さまは家がスッキリと片づいている方が多いのですが、コンパクトな家が多く、決して収納が充実しているわけではありません。共働きで多忙な方やお子さんが小さい方も多いです。
ではなぜ、スッキリ片づいているのか考えてみると、家づくりの打ち合せの段階で「とにかく収納が欲しい」ではなく、「こういうものを入れたい」とか「こういう行動をすることが多い(したい)から、◎◎のための収納が欲しい」というイメージがはっきりしているからではないかと思います。
要は“自分を知っている”からではないかと。
私も家を建てた時に「きれいなキッチンになったら、料理をする回数が増えるかも」と思ったものの、実際は変わらなかったことから「家を建てたぐらいでは人間変わらない」とよく言っているのですが(笑)、収納が増えたぐらいで何でも床に置いてしまうクセが治るわけではないのです。
だから「やみくもに収納が欲しい」という要望ではなく、今、どうしてモノが出しっぱなしになっているのか、溢れているモノは何かを正直に建築士に伝えて、「どこに、どんな収納を作るべきか」を相談することをオススメします。
そこから考えられるのが、注文住宅、設計事務所で家づくりをする醍醐味なのですから。
実際、「お客さんが来た時に、さっとモノを隠せる収納が欲しい」という要望も多いのですが、これだって自分を知っているということだと思うのです。
家を建てる前にやって欲しいこと
さらに言うと、できれば家を建てることを考えた時に、持ち物をすべて見直すことをオススメしたいです。
本当はいらないモノまで収納しようとしているために、「◎◎㎡以上ないと厳しい」と考えているケースは多いと思います。
特に狭小住宅を建てる場合は、ぜひやって欲しいです。
わが家は引っ越してからずいぶんモノを減らしましたが、現在の量まで減らせていたら、収納ももっと違ったものになったと思います。
家を建てた時はそれこそざっくりモノが入れられることしか考えていませんでしたが、今、18年住んでみて、何でも入れられる収納が必ずしも使いやすいわけではないと気づきました。
さらに家を建てる時に一番重視すべきなのは「後から変えられない部分」だと感じているからこそ、「収納重視」の家づくりはもったいないと思うのです。
「後から変えられない部分」については、また改めて書きたいと思います。