建築士が考えるのは「間取り」じゃない
狭小住宅で検索すると、間取り集などがたくさん出てきます。
土地が小さいからこそ、間取りが大切、ということだと思いますが、もし「間取り=住宅の部屋の配置」を意味しているのなら、それは違うと考えています。
よく建築士の夫は「自分が考えているのは、間取りではなくてプランだ」と言います。
不動産のチラシのように平面で部屋の並びを考える「間取り」ではなく、立体で天井の高さ、窓をどこにつけるか、床から窓の高さ、階段の位置なども含めた「空間の使い方」なのだと。
もっといえば、その敷地に建物をどう配置するのか、どこからどんな景色が見えるようにするのか、隣の家との距離が近い場合はどういう方法をとるか、建物のまわりはどう使うのか…などなど、いろいろなことを合わせて考えるのが「プラン」なのです。
面積が同じでも、その間取りがオススメとはいえない
だから「敷地が20坪で建ぺい率は60%」という2つの土地があったとしても、プランによって全く違う家になりますし、広く感じるか、狭く感じるかも変わってきます。
つまり「敷地20坪ならこの間取りがおススメ」という考え方はできないということです。
では、小さな土地に家を建てようとする時、施主側はどんなふうに希望を伝えればいいのでしょうか。
以前の記事で「収納重視の家はもったいない。重視すべきは後から変えられない部分」と書きましたが、答えはこの「後から変えられない部分」です。
大事なのは何が欲しいか?ではなく、どう過ごしたいか?
先ほど書いた天井の高さ、窓をどこにつけるか、床から窓の高さ、階段の位置は後から変えられません。
もちろん「階段の位置はここがいい」なんて分からなくて当然です。もっとざっくりしたイメージで、例えば
「とにかくリビングで過ごす時間を大切にしたい。明るいリビングで、家族みんなで気持ちよく過ごしたい」
「子どもが帰ってきた時、分かるようにしたい。常に気配が感じられるようにしたい」
「窓から少しでも緑が見えるようにしたい」
「お風呂に入る時間を大切にしたい」
など、この家でどんな気持ちで暮らしたいか、どんな日常を増やしたいかと伝えればいいのです。
そうやって「プラン」の柱となる方向性が決まることで、天井の高さ、窓の位置、床から窓の高さ、階段の位置が決まり、そこからやっと間取りが決まって、さらに収納はどうするか?という話になっていくわけです。
狭小住宅だからこそ、プランの“柱となる部分”が大切
敷地の広さにも予算にも余裕があるなら「1階も2階も広く感じられて、お風呂も広くて気持ちいい」でいいのですが、狭小住宅の場合はそうはいきません。
でも、限りがあるからこそ、大事にしたいポイントを明確にすることが家づくりをしていく上で重要になります。
こう書くと「広いリビングを第1希望にしたら、あとはすべて我慢しなきゃいけないのか…」と思ってしまう人がいるかもしれませんが、そんなことはありません。
例えば建物の高さに制限がある中で、2階の天井を高くするためには、1階の天井高を抑えることになります。でも、抑えるといっても頭すれすれにするわけではなく、家族が生活すえう上でこれぐらいの高さに抑えればいいだろうという高さにするのです。
こうやってメリハリをつけていくことで、狭い敷地でも希望を叶えて、狭さを感じない気持ちのいい空間をつくっていくことができます。
前にも書いた通り、こうやってメリハリがつけられるから、狭小住宅こそ注文住宅がオススメだと思うのです。