広いリビングが欲しかった頃
夫の設計事務所に相談にみえるお客さまにも、「人が集まれるように広い家にしたい」「ホームパーティーできるリビングにしたい」とおっしゃる方は多いです。あとは「バーベキューができるデッキがほしい」もよくあります。
わが家のことを考えると、長男が保育園の頃は、広いリビングが欲しいなあと思っていました。保育園に仲の良いママ友数人がいたのですが、うちで集まる回数が一番多かったからです。
子どもが小さいとお店でゆっくり食べられないし、保育園の仲間は当然、昼間は働いているので平日ランチができない。だから、一緒にご飯を食べようとすると、保育園のお迎え後か土日になるわけです。そうすると、家が一番ラクなんですね。
でも、当時はリフォーム前で、今よりもリビングが狭い上に、和室に上がる階段が回り階段になっていて危なかったので、子どもを遊ばせつつ、ゆっくりご飯が食べられるリビングだったらなあと思っていたわけです。
「人が集まる家」のその後
振り返ってみると、うちが一番「人が集まる家」だったのは長男が1〜4歳頃で、その後はそういう機会も少しずつ減っていきました。
まず、まわりに第2子、第3子が生まれて、お互いに忙しくなったことが理由です。1人の時は身軽でも、下の子が生まれると、子どもどちらかの体調が悪い日も増えるし、親も忙しくなります。
子どもが小学生になると学校も別々になり、サッカーなどスポーツを始める子も増えて休日は忙しくなり、会う機会も減っていきました。
それでも年に1〜2回は集まったりしていて、でも、ずっと親が目を離せなかった保育園時代とは違い、子どもは子ども部屋でゲームをやり、大人はリビングでおしゃべり…と、部屋の使い方も変わりました。
これは友達じゃなくて、親戚の場合も同じだと思います。子どもや孫が集まって狭いと感じていたのに、それぞれ大きくなるとお正月ぐらいしか集まらなくなってしまうケースって多いと思うのです。
ホームパーティーよりも優先すべきもの
そうやって考えると、「人が集まれる家」「ホームパーティーできるリビング」ってずっと必要なものじゃないなと。
もちろん敷地、予算に余裕があればいいですが、そうでない場合、そこにスペースとお金を優先していいのか、冷静に考える必要があります。
人がよく来る生活をしていると、来なくなる生活をイメージしづらいものです。その理想を全くあきらめるべきというわけではなく、活かすけれど最優先にしない、という視点が、特に敷地や予算が厳しい時は大切ではないかと思います。
じゃあ、何を優先すべきなのかというと、そこにずっと住む家族の生活、その中でも一番長く住む夫婦の生活ではないでしょうか。
特にコロナ禍で気軽にお客さんを呼べなくなって、家族だけで家にいることが増えて改めてそう感じています。
広い家=人の集まる家じゃない
もう1つ感じるのが、広い家だから「人が集まる家」になるわけじゃないということです。
お客さんが多かった当時、遊びに来ている友達の中には、うちよりも広い家に住んでいる人もいました。それでも集まるのがうちになっていた理由は、家の近所に駐車スペースがあったことや、保育園から近かったから。
そして実は一番大きいのは、私も夫も気軽に人を呼ぶ性格だったからだと思うのです。お店が空いていない時、家がすごくきれいじゃなくても「じゃあ、うち来る?」と言ってしまうタイプだということが一番大きいのではないかと思います。
そう考えると、人が集まる家というのは、広い家である以前に、気軽に行きやすい家なのではないでしょうか。
ご主人は人の集まる家にしたいけれど、実は奥さまは人を家に呼ぶのがあまり好きではない、とか、人を呼ぶことを前提にリビングの配置を考えたけれど、実際は仕事が忙しく、人を呼ぶ余裕がない、なんていうケースも聞いたことがあります。
家を建てる時はいろいろな夢を持つものですが、家が変わったからと言って性格や生活スタイルが変わるわけじゃない、ということを忘れないでいると、実は自分に合った理想の家を作れるのだと思います。
家を建てて20年建って、一番思うことです。
普段は他のことに使えるスペースを広めにとっておくことで、人を呼んだ時に対応するのもありだと思います